子育て支援員は児童館や公共施設などで子供の保育に関わったり、保護者への情報提供および相談業務を行ったりする仕事です。
保育に関わる仕事には保育士や幼稚園教諭などさまざまな職種があり、子育て支援員は保育関連では新しい職種となります。
しかし、すでに多くの人が子育て支援員の資格を取得し、保育現場で活躍しているんですよ!
資格取得と聞くと「難しいのでは」と思われがちですが、子育て支援員の資格は年齢制限がなく、保育や子育て支援に関心があれば比較的簡単に取得できます。
「子育て経験を生かして働きたい」「保育の仕事に興味がある」という人にはおすすめの資格です。
そこで今回は、子育て支援員の資格の取り方と研修内容、就職の方法について解説します。
目次
子育て支援員とは
東京都などの自治体が実施する研修を修了し、子育て支援に関する知識や技術等を修得したと認められた人が「子育て支援員」です。
子育て支援員の就職先は、子育て支援センターや親子ひろばなどの子育て支援拠点のほか保育施設、児童館、児童クラブ(学童クラブ)、乳児院・児童養護施設などになります。
子ども・子育て支援新制度について
平成27年4月にスタートした「子ども・子育て支援新制度」は、子育て支援の量および質の両面を改善する制度です。家庭の状況に合わせて子育て支援の選択肢を増やしたり、待機児童解消のための受け皿を増やしたりすることを目的にしています。子育て支援員には、新制度の土台となる役割が期待されています。
子育て支援員の仕事内容
子育て支援員の仕事内容は就職先により大きく異なります。ここでは、4種類の就職先に分類し、仕事内容を紹介します。
保育園・保育ママなどの保育施設
保育園・保育ママなどの保育施設に就職する場合の仕事内容は、主に保育補助になります。
保育士の仕事内容とほぼ同様に、未就学児の身の回りの世話をすることがメインの業務です。
具体的には、以下のような作業に従事します。
- 保育環境の整備や安全確保
- 食事・トイレの介助
- 散歩の付き添い
- 清掃
保育施設での仕事は子供たちと直接関わり成長を感じることができます。
保育の仕事の魅力を十分に感じられる職場と言えるでしょう。
保育ママとは
家庭的保育事業のことを指します。市区町村の認定を受けた家庭的保育者の自宅などで、少人数(定員5人以下)の保育事業を行います。
出典:東京都福祉保健局「家庭的保育事業(いわゆる「保育ママ」制度)とは」
子育て支援センター・行政機関・公共施設
子育て支援員の仕事は、保育補助だけではありません。
子育て支援センターや行政機関の窓口で保護者の相談に乗ることも子育て支援員に求められる重要な仕事です。
具体的には以下のようなことが仕事内容になります。
- 家庭のニーズや悩みの聞き取り(相談業務)
- 必要な情報提供
- 地域関連機関との連携
行政機関の相談窓口などで働く場合には、来客対応、電話対応、書類作成などの一般事務的な作業が多くなるでしょう。
児童クラブ・学童クラブ
児童クラブ・学童クラブは、保護者の就労などで放課後に子供をみることができない家庭を対象に、子供が安心して過ごせる場所を提供し、見守るための施設です。
児童クラブ・学童クラブでの仕事内容は以下のようなものになります。
- 学習サポート
- 遊びの見守り
- 環境整備・安全確保
- 清掃
児童クラブなどは、小学校に就学している児童が対象となるため、身の回りの世話をする必要はありません。
子供にマナーやルールを指導したり、自己管理できるようサポートしたりすることがメインの仕事です。
乳児院・児童養護施設
保護者のいない子供や、虐待などの事情で保護が必要な子供を養護し、支援する施設が乳児院・児童養護施設です。
子育て支援員が乳児院・児童養護施設に就職する場合の仕事内容は以下です。
- 健康管理
- 精神的ケア
- 環境整備
- 生活支援
ほかの3種類の就職先と異なり、乳児院・児童養護施設は、子供の生活の拠点となります。
そのため、乳児院・児童養護施設で働く子育て支援員は、保護者に代わり子供の生活全般をサポートすることが仕事になります。
子育て支援員の給与はどのくらい?
大手求人サイトの求人を調査すると、子育て支援員の給与は東京都の場合で時給1,041~2,000円程度、正社員は月給18~24万円程度です。
子育て支援員の給与は施設により幅があり、経験や年齢、子育て支援員以外の資格の有無などで変わると考えられます。
子育て支援員としてフルタイムで働いた場合、年収は220万円前後~300万円前後となります。
東京都の平均年収が約585万円であることと比較すると残念ながら子育て支援員の給与は恵まれているとは言えません。
出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」
一般的に、保育士をはじめ保育の仕事は、労働内容に比較して賃金は低い傾向です。
しかし、国はすでに待遇改善を進めており、子育て支援員の給与に関しても今後改善することが見込まれます。
どんな人が子育て支援員に向いている?
子育て支援員は、自治体の相談窓口などに勤務するケースを除き、基本的には子供たちと一緒に過ごし、生活面や精神面をサポートすることが主な仕事内容となります。
子供たちと過ごす時間が長くなるため、子供好きであることは子育て支援員の資質として最も重要です。
「公園で子供と遊んでいたら自然と周囲の子供も集まり、みんなの面倒を見ることになった」
というような経験があれば、子供たちからも好かれるよい支援員となる可能性が高いでしょう。
また、子育て経験があれば予測不可能な子供の行動に対応できたり、保護者の悩みに寄り添えたりするため、保育現場で即戦力となれます。
体力があることも子育て支援員に必要な資質の1つです。
未就学児であっても、ハイハイ期以降の子供は活発に動き回ります。
そのため、子育て支援員は子供が危険な行動をした際に、とっさに駆け寄る、抱き上げるなどの対応ができなければなりません。
子育て支援員に限らず、保育の現場では体力があることは前提と考えましょう。
- 子供が好き
- 子育て経験がある
- 体力に自信がある
子育て支援員の働き方
子育て支援員は求人の多くがパートまたはアルバイトです。
一方で、求人数は少ないですが正社員の募集も存在します。
子育て支援員としてパートなどで経験を積み、将来的には正社員での雇用を目指すというキャリプランも考えられるでしょう。
なお、子育て支援員の資格を取得しても、市区町村では就職先の斡旋をしておらず、基本的には自分で求人に応募する必要があります。
子育て支援員の求人を探すには以下の方法が挙げられます。
- 市区町村の広報誌
- ハローワーク
- 転職サイトなどインターネット求人情報
東京都の場合は「東京都保育人材・保育所支援センター」(ホイクマ )でも、求人情報の掲載や相談を受け付けています。
子育て支援員として働くメリット・デメリット
子育て支援員の仕事に就くにあたってはメリットが多くある一方、デメリットもいくつか存在します。
ここでは、子育て支援員として働くメリットとデメリットについて説明します。
子育て支援員の資格取得に挑戦する前にぜひ参考にしてください。
メリット
子育て支援員は保育に関わる仕事ですが、国家資格である保育士ほど資格の取得が難しくありません。
また、子育て支援員の資格取得には年齢制限がなく、短期間で取得することができます。受講費用は無料です。
子育て支援員の求人は雇用形態がパート・アルバイト、正社員と多様で、勤務時間も週1日~フルタイムまでさまざまです。
そのため、自分の今の状況に合わせた働き方を選択することができます。
たとえば、子供が小さいうちはパートタイムの支援員として働き、子育てが一段落してからフルタイムに切り替えるといった働き方も可能です。
就職先についても、保育施設や児童クラブ、児童館、児童養護施設、行政機関などさまざまなため、自分に合った職場を探しやすいでしょう。
- 資格取得が難しくない
- 年齢制限がなく、短期間で資格取得できる
- 受講費用が無料
- 短時間勤務やフルタイムなど働き方が選べる
- 就職先が多様で自分に合った職場を探せる
デメリット
上述した通り、子育て支援員の年収は220万円前後~300万円前後となり、給与は高いとは言えません。
また、子育て支援員の仕事内容は就職先により異なりますが、保育補助が業務に含まれる場合は体力勝負となります。
抱っこやおんぶ、鬼ごっこなどで想像以上に体力を消耗する上、腰やひざなどを痛める場合も。
雇用形態の面では、正社員を希望する場合、求人はあるもののパート・アルバイトに比較すると件数は少なくなります。
将来的に正社員になることを見込んでいても、実際には正規雇用に至らない場合もあるため、あらかじめ想定しておく必要があります。
- 給与が低い傾向がある
- 体力勝負
- 正社員は狭き門
資格の取り方
子育て支援員の資格は以下の手順に従って取得します。
- 子育て支援研修に申し込む
- 研修を受講する
- 修了証書の交付を受ける
まずは自分の居住する地域または勤務している地域で実施している子育て支援研修に申し込みます。
子育て支援研修の受講費用は無料です。交通費と昼食代は自己負担となります。
研修は基本研修と専門研修の2種類があり、両方を受講する必要があります。
基本研修の免除
保育士、社会福祉士の資格を保有している人、幼稚園教諭、正看護師、保健師の資格を保有し、子供と関わる業務に就いている人は基本研修の免除が可能です。
子育て支援研修を終え、修了証書の交付を受けると子育て支援員の資格が取得できます。
研修内容と研修期間は?
子育て支援研修には4つのコース(分野)があります。
- 地域保育コース
地域保育コースは、小規模保育や家庭的保育(保育ママ)、事業所内保育、一時預かり保育の施設で仕事に就きたい人へ向けたコースです。
基本研修の8科目・8時間のほか、専門研修として11科目15時間、それ以外に事業形態ごとに異なる内容の6科目6.5時間の研修と2日間の見学実習があります。
- 地域子育て支援コース
地域子育て支援コースは地域の子育て支援センターや親子ひろばなどで働きたい人へ向けたコースです。
基本研修の8科目・8時間のほかに、事業形態ごとに異なる内容の専門研修として5~9科目・5.5時間~16時間を受講します。
利用者支援事業・基本型の事業に従事する場合は、見学実習が1日あります。 - 放課後児童コース
放課後に小学生の児童が過ごす学童クラブで、放課後児童支援員補助者として働きたい人へ向けたコースです。
基本研修8科目・8時間のほか、専門研修6科目・9時間を受講します。実習はありません。 - 社会的養護コース
乳児院や児童養護施設などで子供を保護・養育し、家庭を支援する仕事に就きたい人へ向けたコースです。
基本研修8科目・8時間、専門研修9科目11時間を受講します。実習はありません。
まとめ
子育て支援員は自治体の研修を修了することで資格取得できます。
資格取得後は、子育て支援センターや保育施設、児童館、児童養護施設、行政施設などに就職し、子供と保護者をサポートする業務に就きます。
子育て支援員は需要が高く働き方が選べる反面、給与は低い傾向があり、保育補助業務は体力が必要です。
しかし、子供が好きな人や子育て経験者にとっては、適性が高くやりがいのある仕事と言えるでしょう。
子育て支援員のデメリットである待遇面は、今後改善される見込みがあるため、保育や子育て関連の仕事に興味がある人は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。